バロック・ダンス懺悔録

聖和笙のバロック・ダンスに纏わるブログです!                            Les Confessions pur la belle danse.

2014年11月

12月10日のバロックダンス・アカデミーは特別講師にたますけさんをお迎えして
能楽の基礎を学びます。たますけさんとはこうもりのカドリーユでご一緒させて
頂いて体から発せられる素晴らしいエネルギーに触れたのですが、お話を伺うと
能楽を学ばれたとの事でした。
能楽は江戸時代まで猿楽と呼ばれて長い時間の中で育まれて来た日本の総合芸術です。
その中でも、世阿弥の記した風姿花伝は私にとって何時も忘れる事の出来ない心得の書と
なっています。「花の事は花に習え」は、体の軸やエネルギーの使い方を言い顕わした
最も美しい言葉だと思います。「物真似」は、人間の体や思考を常識から解き放つ
目覚めの言葉になっています。そして「幽玄」については余りにも広大な智慧なので
未だに暗い迷路の中で模索を続けています。
バロックダンスのシンプルな振り付けの踊りに説得力を持たせる為にはも体の使い方が
重要です。例えば女性のフォリアの1番では、タンデクーラント、タンデクーラント、
クペアサンブレ、タンデクーラント、パドブレストゥニュ、クペ、パドブレターン、
クペと歩きだけで踊りを 見せなければならないのです。そこで大事なって来るのは体を
どの様に使うかという事です。体の使い方という観点から考えると多くの踊りは共通項を
持っているのです。
12月10日のバロックダンス・アカデミーは能楽の基礎、そしてバロックダンスとの
共通点をご体験いただきます。是非ご受講下さい。なお、足袋と扇がお持ち下さると
より良く学べます。

今夜は初級の練習を行いました。基礎練習は、5つポジションとアプロンとアンディオールを
行いました。ダンスは現代の日本人の日常生活とは全く異なった体の使い方をしますので
練習には細心の注意を必要とします。文明が進んで人間の古来からの身体性が
失われた事はフィリップ・K・ディックの小説の世界に迷い込んでしまった様な不思議な
感覚を覚えますが、情報化が進んで秘伝的な知恵を入手し易くなった今日、それらを
積極的に取り入れると生活の中に温かな潤いが立ち現れて来ると思います。
ステップ練習は、タン・デ・クーラントとパ・ド・ブレ。性格の異なる2つの
ステップを学びます。タン・デ・クーラントは、身体を垂直に引き上げて足を
スライドさせて重心を移動させる動き、パ・ド・ブレはプリエから拍の頭で伸び上がって
3歩進むステップです。この様に異なったステップを使い分ける事によって踊りを
歌いあげる事が出来る様になります。
バレ・ド・クールすなわち宮廷舞踏の練習は、ヴィレ・ブーレつまり古いブーレを
学びました。ステップ練習で行った、タン・デ・クーラントとパドブレを使った踊りに
なります。バロックダンスはフィギュアという床に象形を描く事をルネサンスダンスから
引継ぎました。床に図形を描く事によって回転するステップが学べます。
受講者の方々は始めは苦戦していましたが繰り返し踊る事によって美しいフィギュアを
習得していました。さらに基礎練習で行った基本的を意識すれば、シンプルな振り付けの
踊りだからこそ珠玉の宝石の様な美しい輝きを放つ様になるのです。

本日は私にとって特別な存在、ジャン・バティスト・リュリの382回目のお誕生日でした。
復活上演された素晴らしいトラジェディ・リリック「アティス」を鑑賞してお祝い
をしました。リュリはイタリアからフランスにやって来て「王の夜のバレ」の舞台で
ルイ14世と出会い多くの名曲と踊りを残した方です。
ルイ14世が自ら何度も踊った荘厳なアポロンのアントレ、天上的な美しさを湛えた
ファエトンのシャコンヌ、妖艶な魔女の踊りアルミードのパッサカイユ、
ロマンティシズムの極みペルセのパッサカイユ、コミカルな道化師の踊り
アルルカンのシャコンヌ、エキゾチックなスペインの踊りフォリア、
気品溢れる優美なアキスとガラテのシャコンヌ、魂を揺さぶられる様な勇壮さを持つ
ペルセのアントレ、男女の機微を表したマリエ等、後年のモーツァルト、
チャイコフスキー、ヴェルディ、プッチーニ、ワーグナーに匹敵する、
変幻自在の稀有なメロディメーカーつまり天才だと思います。
そしてリュリの踊りを踊ってるとヴェルサイユで行われた数々の舞踏会や
舞台作品や事件がそこに投影されているようですとても感慨深いのです。
多くの素晴らしい作品は残されていてますが上演される機会は少なく諸事情で
現代風の演出になっていることは残念ですが、カルチャーギャップや予算や
舞台構造の問題で仕方無いのかもしれなません。今後、相応しい演出の上演が
現れる事をお祈りしつつ、日本での上演の有り方を模索したいと思っています。

今年は恵まれた事に、多くの方々と初めてバロック・ダンスを踊らせて頂く機会が
ありました。そこでまず感じるのは、人そのものと対峙するという、いわば千利休の
一期一会にも通じる親和性です。踊りは何も持たずに自分を表現する行為なので
自分の現在を隠したりする事は出来ません。それは時として大きな喜びや哀しみを
与えてくれます。
そして次に思うのは、例えば同じ曲を踊ったとしても人それぞれ解釈が全く
異なっている事です。日本のバロック・ダンスの場合、古典舞踏研究会が共通知
として継承して来たウィーンやニューヨークバロックを元としたスタイル、
そこから分化してアメリカのウェンディ・ヒルトン・スタイル、フレンチ・スタイル、
フレンチでもよりベル・ダンスに近いスタイル、イギリスで学ばれる方のスタイル等
様々があると思います。
また、その方がこれまでにどの様な身体表現に携わって来たかでも踊りは大きく
異なります。クラシック・バレエ、ジャズ・ダンス、ボール・ルーム、社交、
ワルツ、能。これらの要素の影響に依って、重心や軸や音取りは人それぞれ全く
異なるのです。バロック・ダンスが日本に普及して2世代、3世代の方々がご活躍
なされているのでバロック・ダンスに対する考え方も人それぞれで、お話を伺うと
大変興味深く勉強になるのです。
あるスタイルで踊ると複雑な舞踏譜が驚くほど簡単に踊れたり、あるスタイルで踊ると
跳躍や回転をより愉しめたりと時と場合によって幾つかのスタイルを使い分けて
踊るのは愉しい事です。
そして年齢、性別、スタイルを越えて舞踏譜を覚えていれば出会ったその瞬間に
でも共に踊れる喜びは筆舌に尽くし難いものです。これからも多くの方々と
バロック・ダンスを踊れて刹那を共有できたらと思います。

今夜の講習会の前半は、アンディオールを幾つかのアプローチで身に付ける
練習を行いました。ルネサンス時代は厳密に足のポジションは定義されて
いませんでしたがバロック時代に振付家ボーシャンによって初めて5つの
足のポジションが定義されると、アンデオールはダンサーにとって足を
自由に使える方法とし重要性を増したと考えられます。理解する事自体が難しい
概念ですのでゆっくり練習して無理なく身に付けられるように練習しています。
身について来ると踊りの中で体が自由に使える様になってきます。
練習の後半は、バレ・ド・クールとしてコントル・フェザールの第2回目を
行いました。大きく分けて1番と2番の構成で、前半の1番を行いました。
ポイントとしては、4ページ目のグリッサードから始まる位置交換の部分が
曖昧だったので振付を再確認すると踊りが見違えるように美しくなりました。
1、2ページ目で同じ場所から相対する位置に移動して、3ページ目で
アッサンブレの真似っこ、4ページ目で位置交換、5ページ目で
ビット(ダブルカウント)の真似っこを行い、その後結果的にフィギュアが
45度回転した状態で3ページ目から5ページ目までの振付をもう1度繰り返します。
ここまでで1番は終わりです。残す2番も1番のバリエーションになりますので、
曲のスピードに体が付いてこれて、振付の少しの違いを踊り分けられれば、
以外と簡単に踊れるようになります。12月の2日間で2番と通しの練習を行います。

サラバンドと言えばリュリとモリエールの傑作「町人貴族」の中で踊られる
サラバンドが有名でこの曲には男性のソロと女性のソロの2種類の振付けが
残されています。今回の公演では岩佐さんに女性のサラバンドを踊って頂き、
私が踊りますのは町人貴族のサラバンドとは別の曲のスペインのサラバンドです。
6/8拍子の曲で美しい仕掛けが沢山施された楽しく賑やかな踊りです。
フォリアを始めスペイン系のバロックダンスはクロワゼを多用するので当時は
それがスペイン風という事を表していたのだと思います。明るい中にも
エキゾチックな要素が含まれていて、やはりこの曲にしか現れないステップが
いくつかあるのです。バロック時代の振付家はステップの発明家としか
言い用がありません。これまで私が踊った男性のソロはラ・マテロット、
アポロンのアントレ、男性のフォリア、アルルカンのシャコンヌと数えてみると
4曲と数少ないのですが、今回はエマーブル・ヴァンケール、
スペインのサラバンドの2曲が加わります。これから少しずつソロのレパートリーも
増やして行きたいと思います。
テア トル・ド・ベルサイユ公演 太陽王のバレ は、12月28日(日)です。

今夜は久しぶりに中世音楽の名盤の一枚をレコードで聴いています。 
14、5世紀に栄えたキプロス王国の音楽です。当時キプロスはフランスが支配していたそうで 
1413年から1422年の間のフランス語のシャンソンとラテン語のモテトゥスが収録されています。
演奏はアンサンブル・プロジェクト・アルス・ノヴァ。カウンターテナー、テノール、メゾ・ソプラノの
3人で歌われコルノ・ムト、ビエール、リュート演奏されます。コルノ・ムトは笛でしょうか。
聖と俗の入り混じった不思議な味わいが有り、中世と近代で響きは全く違いますが
構成で言えばカール・オルフのカルミナ・ブラーナのような作品といえば解りやすいでしょうか。
素朴で美しい響きが粛々と演奏されて、いつ聴いても心を洗われますが、アブローズの踊りという
舞曲が収録されていて、羊皮紙に描かれた挿絵でしか見ることの出来ない中世の踊りに
いつも思いを馳せています。
1. 苦しみの代りに 2. いつも 3. 残酷な運命 4. 運命の女神に 5. 私は愛の糧を(いただきます)
6. 上品で美しい方 7. 心が真のよろこびで(満たされていなければ) 8. 私は自分の心を
9. 私は何度も聞いた 10. (それは)うれしいことではあるが 11. アブローズの踊り
12. ピグマリオンは(とても上手に) 13. 気高き父よ/何と甘美に 
14. 聖母のみ母アンナ/めぐみの母よ/おおマリア様
15. おお,乙女の中の乙女/おお聖なる乙女/あなたの娘たるあなた 
16. 今日キリストは生まれたまいぬ/今日御子が生まれる/人は死すべきもの
の16曲が収録されています。
レコードの音はCDよりも暖かで、中世の音楽を聴くにはぴったりだと思います。

このページのトップヘ