子供の頃、私にとって最も身近な演劇は歌舞伎でした。月に一回、東銀座の歌舞伎座に
足を運んで黙阿弥や南北や近松の怖ろしい程に魅惑的な世界に引き込まれて、現実に
戻るのは何かの間違えなのだといつも思っていました。ですからリュリ没後300年の
アティスの復活上演を見た時、ドラマツルギー、音楽、ダンス、装束、等、どこをみても
フランスのバロック時代にも歌舞伎があったのだなと思いました。
私の大好きな三島由紀夫さんの歌舞伎作品に椿説弓張月があります。これは、菅原道真を
英雄とした叙事的作品なのですが、グレコ・ローマン神話のペルセウスをテーマとした
リュリのペルセには弓張月と多くの共通点があります。ペルセは盾と靴と兜を手に入れて
白馬ペルセウスに乗って世界を旅して怪物達を退治しますが、道真公も日本全国を旅して
怪物を退治して舞台の最後は白馬に乗って舞台から大向こうまで宙乗りで去って行くのです。
三島さんが組織した劇団がローマン劇場であり自衛団が盾の会であったことを考えれば
ペルセウスの神話を菅原道真と重ね合わせて創作したものだと思います。
三島さんは近代能楽集などをとっても東と西の神話を織り交ぜて素晴らしい作品を
魅せてくれました。ルイ14世がヴェルサイユで行った華やか祝祭に、日本と
フランスに現れた演劇やバレエの天才達を重ね合わせてみるとヴェルサイユ・ダンスが
より身近なものに感じられると思います。